2009年7月7日火曜日

無関心も世を動かす


「カルチュラル・タイフーン2009」での「Dialogue in Palestine」上映は、まずまずの成功だった。「参加者1人」という回もあったそうだから、20人以上の参加は盛況と考えていいだろう。 感想文を読むかぎりでは、メディアアクティビストFさんとのトークもなかなか好評だったようだ。

立場は若干異なるが、Fさんとはセンスが似ている。メディアの構造を考えるのが好きで、それを如何に逆用するかという仕掛けを常に考えているという点で、お互いヒネクレものである。そん
な二人が今回テーマに据えたのは、一言で言えば、「無関心に対する表現の闘い」である。 情報過多の現在、パレスチナのように遠い世界の出来事に共感を求めるには、それなりの技がいる。とはいえ、やりすぎれば演出過剰になってしまうし、「衝撃映像」ばかりをかき集めるのも考えモノだ。豊かな表現は共感を呼ぶが、それは常にエンターテイメントに堕してしまう危険性も孕む。エンターテイメントはある意味で、恐怖を「平和な日常」に回収し、結果的に無関心を温存する装置である。

まあ、そんなことをあれこれ話していた二人だったが、実際フタを開いてみると、客層は若い学生が中心。パレスチナ問題じたいを知らない人が多かったようで、そこまでの議論にはついてきてくれなかったようである。ともあれ、パレスチナに対する無関心だけは打破できたようなので嬉しい。映像で社会を動かしたいと願うわれわれにとっては、それが第一の「仕事」だ。

しかし、無関心が社会を動かさないのかといえば、そうでもない。AIDS問題が世界中で話題になっていた90年代初頭、アーティストによる啓蒙ポスターの一つに「無関心は人を殺す」という文言があった。そう、無関心は意外と積極的なのだ。

その最たるものが、構造改革路線に対する無関心だろう。派遣村の取り組みを撮影しているとき、入村者の誰かが「小泉政権のときに自民党に投票したやつは、ここに入る資格なんてない」と言っているのを耳にした。確かに、新自由主義的な政策は、必ずしも一方的に押し付けられたとは言い難い。バブル経済崩壊後の閉塞的ムードの中で、むしろ歓迎された感さえある。労働、福祉、医療といったあらゆる社会保障的枠組みが目に見えるほどに破綻し、初めて問題の本質に気づいた国民。その政治への無関心こそが、現在の破滅的状況を生み出したといえる。

VJU企業組合準備会が主催する「VJが訊く」のシリーズは、まさにこの問題を軸として企画している。今週末に行う第2回は、派遣問題を主に、新卒学生の就職問題にも触れる。今回上映するオリジナル映像の取材では、ジャーナリストの斉藤貴男さんが「現在の状況は、(経済の破綻が問題なのではなくて)新自由主義がまさに目指したものだ」と語ってくれた。すなわち、派遣問題も学生の就職難も「意図された結果」だということだ。これに対して、どう闘っていくのか。外堀をすべて埋められる前に、われわれはこの件に関する無関心を打破する必要がある。

「VJが訊く!第2回 貧困と闘う ~敵はどこにいるのか~」は、7月11日(土)新宿ネイキッドロフトで、夜7時半からスタート。無関心の怖ろしさに気づいてるなら、ぜひ参加して、われわれとともに語り合ってほしい。まだ、終わりじゃないと思う。

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