2010年4月4日日曜日

路上の出会い、そして広がり

前回の投稿から、半年過ぎてしまったので、矢継ぎ早に書かなければならない。まずは去年11月21日のトークイベント「第3回VJが訊く!ストリートを取り戻せ」についてだ。と、まとめてしまうには収まりきらない大切な出会いについて語らなければならないだろう。

ストリートシンガー・三浦一人さん。 彼と初めて出会ったのは8月初旬。中野駅北口の歩道だった。美しいメロディラインと、冴えた歌声が、北口ロータリーに響き渡り、道行く人の多くがが彼の前で足を止めた。何度も振り返る人もいた。「本物だな。いつかゆっくり話してみたい」と思った。そう時を経ないうちにそれは実現し、今ではもう親友である。それどころか、直感は大当たりで、実は3年間で4千枚もCDを売り、300人の観客をホールに集める実力派だった。

9月からの半年間、彼とはさまざまな時間をシェアした。多くのことを語り合い、共感した。教え子のドキュメンタリー制作への取材協力を皮切りに、年明けには、彼のホールコンサート撮影をVJUが担当。中でも特に大きかったのは、イベント「第3回VJが訊く!」の特集映像で、軸として登場してもらったことだ。路上での表現活動に対する警察や行政からの規制が強まる中、ミュージシャンたちがいかに路上演奏の場を確保するのに苦心しているかについて、わかりやすい具体的なケースとして取材できたこと、何よりも公共空間の利用について、アーティスト側からの意見が聞けたのは貴重だった。

「第3回VJが訊く!」では、ゲストとして浜邦彦さん(早稲田大学准教授)を招いた。渋谷区がネーミングライツをナイキジャパンに譲渡した宮下公園のケース、野外音楽堂での演奏ジャンルを制限した代々木公園のケースとともに、三浦さんの体験は、「公共」という目には見えない概念について語りあうのに、貴重な題材となった。

VJUブログにあるように、この日の議論はまさに白熱。三浦さん自身が途中から飛び入りゲストとして登場してくれたこともあって、有意義な意見交換ができたと思う。イベントでは、公共空間とそれに対するジェントリフィケーション(再開発などによる排除)など、浜さんのアカデミックな視点からの解説とともに、会場からも積極的な発言が相次いだ。特に印象深かったのは、規制の根拠となる「苦情」がどこから寄せられているのかという議論。中でも一人の学生さんの言った「警察や行政など第三者が介在せず、直接交渉できるような空間にすべきなのでは」という意見は非常にユニークだった。つまり、ちゃんと「出会って」いないからこそ、問題が生じるという見方である。

この視点は、公共空間を考える上で、非常に重要だと思う。特集映像の取材に協力してくださった社会学者・毛利嘉孝さんが「公共空間は意見表明の場だ」と定義することにも通じる。すなわち、「出会い、語らい、時には交渉を行う」という民主主義の発想こそが、公共空間に投影されるべき考え方なのだという一つの弁証法的な答えが導かれる。

ゲストの浜さんとは「たぶん結論が出ないよね」と打ち合わせて始めた議論が、意見交換の中で収斂されていく。話の流れの中で、可能性が見えてくる。トークイベントの面白さを再認識した日だった。こうした議論も、違う人間同士が出会うことから始まるのだ。公共空間への過剰な規制も、意見を交わすことから変えていけたらいいなと思う。

すべては「出会い」から始まる。「出会い」が「出会い」を呼んで、さらに広がる。「出会い」の力こそが、窮屈な社会を変えていける。自分も「路上」を出発点に、信じて闘っていきたいと思う。

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